「祝って」
やたら大きな声でそう言ったのは五条悟と言って、高専が抱える最強の呪術師だった。
教師というまだ年若い呪術師達を教え導く立場のくせに、生徒にはバカ目隠しだのなんだの呼ばれていて、今なんて身長に見合った長すぎる足をどかんとローテーブルに乗せ、背もたれに体重を預けまくって天井を見ている。
突然そんなことを言われても事情がわからない。あきらは首を傾げ、「はい?」とよくわかっていない、本気の疑問を投げかけた。
「僕今日誕生日だから。祝って」
「…………」
五条が更に続ける。
あきらが沈黙した。面倒くさいことになっているのをようやく察したのだ。
無言で鞄の中などを探ってみたが、化粧品の入ったポーチや手帳、コンビニで買ったお茶とお菓子が入っているだけだった。幸いお菓子はまだ開封していなかったので、仕方ないとこれを掴むが、掴んだところで五条が
「手作りのなにかがいい」
と無茶なことを言った。
はーっと大きな溜息を吐いて、ジト目で五条を見る。
あきらの不満げな表情が見えているのかいないのか、五条は「あきら、マジビンタ」と本気かどうかわからないことを言った。
「やめてくださいよ……手作りならなんでもいいんですよね」
「うん」
五条の返答を聞いて、あきらは鞄から手帳を取り出した。おもむろにページを破りとる。なんとなく正方形になるようちぎって、適当に折り始めた。
少しいびつな折り鶴が、だんだん形になっていく。
「……おめでとうございます」
「うん」
一応祝っておくと、案外素直に五条が応える。
アラサーの男が大人しく、あきらの折る鶴の出来上がりを待っている。
特に嬉しそうでも、楽しそうでもない。
ほんと意味のわかんない人だなという思いを、あきらは溜息にして大きく吐き出してみた。