この頃寒くなってきたので、コートを買いにデパートに行った。ちょうどかわいらしいものが見つかったので、ちゃんとサイズを確認して一着。あと暖かそうなセーターを何着か。マフラーをひとつ。
呪術師として日々命を張っているあきらは幸いそれなりの給料を支給されているため、値段を気にせず買い物をすることができる。
ついでに地下で若い子が好きそうなお菓子の詰め合わせを買い、家に帰った。
翌日。
「はい、霞。お下がりだけどいるなら貰って」
「わーー!!!」
任務帰りに寄った京都高専で、ジャージ姿で鍛錬中だった三輪を見つけた。
走り寄って挨拶してきた後輩に、あきらは軽く手を挙げて応え、持ってきた紙袋のうち一つを三輪に差し出す。
三輪が声を上げて目をきらきらと輝かせた。若干大げさに見えるけれども、この子の場合決して大げさなわけではなくて、振る舞いと同じだけしっかり喜んでくれているのをあきらは知っている。
手渡しされた紙袋の中にコートやらセーターやらが数着入っているのを確認して、三輪は少し申し訳なさそうにあきらに頭を下げる。
「いつもすみません!このご恩は必ず……」
「いいって。どうせあっても捨てるだけだから、貰ってくれて助かるよ。むしろお下がりで悪いくらい」
「いえ!あきらさんからいただいたもの、みんな新品みたいに綺麗で……ありがとうございます!」
新品みたい、と言う言葉に内心ぎくりとしつつ、あきらは「汚れたら大変なので寮に置いてきます!」と紙袋を持って走る三輪の後ろ姿を見送った。
本当はもう一つ、みんなで食べるようにと渡すつもりのお菓子を持っていたのだが、これはまた戻ってきてから渡せばいいだろう。
呼び止めようと咄嗟にあがった手を、下ろそうとした時である。
「あらあ、あきら」
「ゲッ」
「ゲッだなんてひどいわ」
振り向くと同じくジャージを着た三輪の同級、真依の姿があり、あきらは身を強ばらせた。家の関係で昔から関わりのあるこのいくつか下の後輩を、あきらは実のところ苦手にしている。
真依が三輪の走っていった方向を見て、からかうように笑った。
「今日は何を持ってきたわけ?」
「あー……、お、お下がりのコートとか……」
「へえ」
「……せ、セーターとか、マフラーを……寒いので…………」
「なるほど。確かに寒いわよねえ」
「だ、だよねえ。最近寒いよねー風邪引いちゃいそうでさー」
「ところでお下がりって、」
真依が言葉を切って、綺麗に微笑んだ。
「タグを外して紙袋に詰め直した新品のことを言うんだったかしら?」
「…………」
すべてお見通しの真依にあきらは観念したように両目を閉じた。真依はそんなあきらの様子を見て、「別に言わないわよ」とクスクス楽しそうに笑っている。
「これは口止め料として貰っておくわね」
あきらの手に下がっていたお菓子の袋をひょいと取り上げて、真依が言う。
別に元々真依も含めたみんなへの差し入れなので、全く問題はない。ないのだが、あきらはなんとなく悔しかったので、うぐぐと年上らしからぬ呻き声をあげた。