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→真依に会いに行く

※双子を置いて行く 続き
 

東京の高専にたまたま顔を出すことがあって、そこで初めて、禪院の家を出てから数年間全く会っていなかった妹分が家を出ていることを知った。
真希ならやると思ってたよ~と昔のノリで抱きついたら呆れた顔をしつつ、真依も京都校にいるぞと教えてくれたので、会いに行かねばと思って、あきらは早速次の日の新幹線の予約を取った。
迷いながらもたどり着いた京都校で、久々に会った学長におみやげのライブTシャツを渡し、歌姫には東京のお菓子を差し出して、訓練中だという真依に会うためにグラウンドに出る。

どれが真依かはすぐにわかった。
少しだけ長くなった髪と、年頃らしくすらりと伸びた手足。

ほとんど大人になった懐かしい妹が、そこにはいた。

「真依~!!」

少し遠くから手を振って、あきらは真依に向かって笑顔で走り寄る。休憩中だったらしい真依はペットボトルに口をつけたまま、あきらを見て目を見開いた。気づいている。

「真依!久しぶり!」

あっという間に真依の前に立って、あきらは両手をばっと広げた。禪院の家にまだあきらがいた頃は、こうして手を広げると、目を輝かせた真依が抱きついてきたものだ。
だが目の前の真依が全く動かないので、あきらはアレ?と首を傾げた。
近くで一緒に休憩していたらしい女の子が、真依とあきらとを見比べてあわあわしている。

「……どちらさま?」

あきらから目を逸らした真依がそんなことを言った。あきらの頭上に疑問符がいくつも浮かぶ。

「え、真依だよね?」
「そうですけど」

真依はまだあきらを見ずに、そっけなく言った。全くの他人に対するような態度だった。

「えっと、あきらだよ。高遠あきら。ほら昔禪院の家にいたじゃん」
「知らないわ」
「うっそだあ。夜中にトイレ行くときは付き合ってあげたし今日はお姉ちゃんもあわせてみんなで寝るって言ってだだこねて泣いたこともあったしそれから」
「知らないって言ってるでしょ!」
「私が出て行く時はあんなに」
「黙って!」

息を荒くして投げつけられたペットボトルをあっさり避けて、あきらは真依に向かって広げていた手を下ろした。拒否したのは自分なのに、それを見て真依がちょっと傷ついたような顔をしたのを、あきらは見逃さなかった。

「今更なんなのよ」
「……」
「置いていったくせに……」

ふてくされている、というのは少し違う。拗ねているのでもない。
真依はあきらをキッと睨みつけた。記憶よりずっと鋭くなった眼光に、おお、とあきらが怯む。

「あんたなんか知らないわよ!」

大きな声でそう言うと、真依はその場を早足で去った。

ふう、と溜息を吐き、口の前に手を当ててあわあわしたままの、真依の同級生を見る。

「こんにちは。真依の友達?」
「は、え~っと…………はい」

片手をあげて、さっきの諍いがなかったように自然に挨拶をするあきらを見て、視線をさまよわせてからその子が答える。三輪です、という自己紹介にうん、と頷いた。

「ごめんね、驚いたでしょ」
「はい」

苦笑いをする彼女は人が良さそうだ。真依とも上手くやっているに違いない。

「いいんですか、真依のこと、追いかけなくて」

三輪が心配そうに言う。
あきらは少し考えて、いいの、と返した。

「少なくとも、私のことどうでもいいってわけではなさそうだから」
「あ!そう言えばそうですよね」
「また来るって言っといて。あとこれ東京土産。みんなでどうぞ」
「ありがとうございます」

紙袋を受け取って、律儀に深く頭を下げた三輪に、あきらは笑顔を向けた。

「ところで三輪ちゃん、連絡先聞いてもいい?」
「え?構いませんけど」
「また来るときは知らせるから、お土産のリクエストとかちょうだい。お礼に別途三輪ちゃん用のお土産も用意しよう」
「……私でいいなら!」

首尾よく女子高専生の連絡先をゲットし、明日の仕事のために東京行きの新幹線に飛び乗ったあきらの携帯には、早速三輪から連絡が来ていた。

『あきらさんのお土産、真依が二つも食べてました!』

かわいらしい報告に、あきらは人の迷惑にならない程度の小さなガッツポーズをした。