まず服をどうにかしないとなあ、とあきらは抱え上げた弟を見て思う。いつどういうタイミングでこういうことになったのかはわからないが、悟は多分元の自分のTシャツを着ていた。
規格外の大きさに育った男のシャツは子供が着るとまるでワンピースのようで、不恰好だし見ていて気になる。
「悟」
「なーに」
随分小さくなってしまった弟を抱えながら、あきらが口を開いた。高くなった視界に喜ぶ弟が、警戒心の欠片もない素直な返事をする。
名前を呼んだときにまともに返事をされるのなんて何年ぶりだろう、と思いながら、気になっていたことを聞いた。
「なんで私が、お姉ちゃんだってわかったの」
悟には記憶がないらしい。それなら悟にとっての姉は、十年以上前の幼い自分のはずだ。なのにこの弟は疑うこともなくあきらをお姉ちゃんと呼んでくっついてくる、それが少し不思議だった。
悟は空色の瞳をぱちぱち瞬かせた。じいっとあきらを見つめ、首を傾げると、「じゅりょく」と言う。
「呪力?」
「ん。おねえちゃんのじゅりょくだから」
「……そっか」
あるのかないのかわかんないと以前笑われたことを思い出して、あきらは少し複雑な気持ちになる。姉の感情の変化に更に首を傾げた小さな頭を撫でた。