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「はぁ!?」

あきらの停学が解けるまではまだ少しある。
一人欠けていること以外、すっかり平常を取り戻した教室に、五条の素っ頓狂な声が響いた。目を丸くしている五条、目を細めて真偽を図っている硝子を目の前にして、夏油は微笑みを浮かべたままもう一度同じことを繰り返した。

「聞こえなかったかい?あきらと付き合うことになった」
「聞こえてるっつの!はぁ?なんでんなことになるわけ?オマエ何があったか忘れてねぇよな」
「もちろん」
「…………」

訝しげに見られる程度でボロが出るはずがない。今の夏油の精神は、そこまで柔ではない。
村での一件に加えて、これまた何も言うつもりがなさそうな親友に、五条が吐き捨てるようにマゾかよと言った。さすがに無言になり、笑顔のまま五条にプレッシャーをかける夏油を見て、それまで黙っていた硝子が口を開く。

「夏油」
「なんだい」
「今後プレイによる怪我については一切治さないから、よろしく」
「…………」

不名誉ではあるが、これくらいの誹りは夏油も受けるべきだろう。わかった、と神妙に頷く。

「……まあそういうわけだから、私の恋人を虐めるのはやめてくれ、悟」
「最初から虐めてねぇっつの。あーあ、心配して損した」

と言いながらも五条はどこかホッとしたような雰囲気だ。理由はわからないままでも、当人間で決着がついたと思えばスッキリするところはあるのだろう。元々五条だって、あきらが嫌いなわけではない。
気持ちを切り替えたらしい五条が、にやりと笑って夏油を見る。

「で、どこが好きなんだよ」
「そうだな……」
「それは答えるんだ?」
「別に恥ずかしいことではないからね」

少し時間をかけて言葉を選ぶ。

「──私が間違った時には、殺してでも止めてくれそうなところ、かな」
「……」
「……」

フフッと笑った夏油の向かいで、同級生二人がとても嫌そうな顔をする。
モノホンじゃねぇか、あきら大丈夫かな、と二人がこれ見よがしに言い合うのを、夏油は面白そうに眺めていた。