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ジグソーパズル

出先で寄ったおもちゃ屋に最近美々子と菜々子がよく見ているアニメのジグソーパズルがあった。
あまりおもちゃやお菓子を買い与えるな、甘やかすなと夏油には時々文句を言われるが、これは変身グッズみたいな音の出る物と違って、知育のために必要なものである。だから問題ないだろう、とあきらは勝手に判断して、高専で待つ二人の子どもの笑顔を思い浮かべながらレジに持って行った。

「美々子、菜々子。お土産買ってきたよー」
「やったー!」
「あきらお姉ちゃん、ありがと……」

高専に戻れば、娯楽の乏しい田舎で退屈していた双子たちは予想通りあきらのお土産を喜んでくれた。
さっそく箱を開けて、共有スペースのローテーブルの上にパズルのピースを広げる。
ああでもないこうでもないと試行錯誤している二人を微笑ましく見守っていたら、

「なにこれ。なんのパズル?」

呼んでもいない五条がふらりとやってきた。

あきらがアニメのタイトルを教えてやると、あーあれね、と納得した五条が子どもたちの手元を覗き込む。
どうも暇だったらしい。
拙い手つきで大好きなキャラクターのイラストを作ろうと頑張っている二人に向かって、「バカ、端から揃えんだよ」とか、「無理やり嵌めんな」とか、望まれてもいない助言を始めた。

不思議なことに五条悟のアドバイスは、聞く者に素直に従いたくない、と思わせる力を持っている。

「ホラ角のやつあるじゃん。まずそれ取って……」
「悟お兄ちゃんうるさい。あっち行って!」
「あっち行って……」

頰を膨らませた菜々子が、はっきりと五条を拒絶した。美々子の追い討ちもついている。

「……」

五条はしばし沈黙し、それから静かに移動して、あきらの横にすとんと座った。

「二人とも頑張ってるんだから、邪魔しちゃダメだって」
「教えてやっただけだろ……」

悪気がなかったのはあきらにもわかっている。だからこそショックだったに違いない。
なんとか笑いを堪えているあきらを、五条が睨みつけてくる。双子が時々するのとよく似た、拗ねた子供のような顔だった。