Skip to content

復活後の五条と

コロニーの出入りが自由になったと自分担当のコガネが知らせるのを聞き、あきらは事態が大きく動いたことを知った。外に出て伊地知に連絡を取ると、まず無事だったことを喜ばれ、いくつかの悪いニュースとともに、五条の封印を解くことができそうだということを教えられる。あきらはすぐ東京に向かい、今はもう結界も何もなくなった高専の地に足を踏み入れた。
あのハロウィンの日からまだ一ヶ月も経っていないのに、まるで数年ぶりにやってきたかのような感慨がある。あきらは苦い顔をして目的地に向かう足を早めた。
 

**
 

「あきらじゃん。やっほー」

数日前まで小さな箱の中に詰め込まれていた男は、とてもそうとは思えない軽さであきらに声をかけてきた。
言葉に詰まり、一息に近づいて胸ぐらを掴んで──結局離す。こんなのはただの八つ当たりだと、自分でもわかっていたからだった。
降参するようにふざけて上げていた両手を下ろし、五条がふっと笑う。

「心配した?」
「誰が」

部屋の中にいた伊地知が気を遣って出て行く気配を感じながら、やっと第一声を絞り出す。「宿儺と」一瞬言葉を切った。

「──戦うって聞いた。イブの日に」
「うん」
「勝てるんだよね?」
「勝つよ」
「……」

こんなことを聞いたって仕方ない。欲しい答えが決まりきっているのにわざわざ尋ねるなんて馬鹿な話で、それでもあきらはそうせずにはいられなかった。

「なにか、私にできることある?」
「その辺は歌姫とかおじいちゃんとか伊地知にお願いしたからなあ。あきらは何もないんじゃない」
「……そう」

下唇を軽く噛む。五条が笑いながら手を伸ばし、眉間をぐりぐりと押しながら「すごい皺」とふざける。反射的に振り払って睨みつければ、からかうようににっと笑った。夏油が隣にいたときみたいな顔だ、と思って虚をつかれる。

「そんなに何かしたいんならさあ、これ全部終わったら、僕と結婚してくれる?」
「は?……」

思わず目を大きくしたあきらは、しかし時間をおかずに呆れたような顔になる。

「それ、死亡フラグみたいだってわかってて言ってるでしょ」
「はは」

全くこんな時にまで。
呆れと一緒に肩の力も抜けた。
そうなると今まで気づかなかった疲労がどっと押し寄せてきて、体が急に重くなった。
もういい、休むと五条に背を向ける。後ろからあきら、と呼ぶ声がして、適当に何と返した。

「後でちょっと手合わせしてよ。感覚落ちてそうでさ」
「はいはい」
「あとさー」

少し間が空いた。
何かと思って振り向くと、五条が薄く笑っている。オマエは生きててよかったよ、とびっくりするくらい素直なことを、五条は言った。