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加茂と閉じ込められる

その部屋のなんたるかを理解したとき、加茂が思った(ついでに口からも出た)のは「よかった」ということだった。
一緒に閉じ込められたのが同級の西宮や後輩の真依のような相手だったらそりゃあ困っただろうが、一緒に閉じ込められたのはあきらで、あきらは加茂の許嫁だ。加茂家の次代当主として生きる自分が、正妻として迎えることを決められた女だった。いずれ夫婦として契りを結ぶことにはなるのだから、その一度目が今日でも全く問題はない、はずだ。

「大ありでしょ!!」

大声で怒鳴ったあきらは、落ち着き払っている加茂とは違って、猛然とドアに向け攻撃を仕掛けている。悉くはじかれているがまだ諦めるつもりはないらしい。
止めようとする度飛んでくる流れ弾を避けたりしながら、加茂が平然と口を開いた。

「私たちの関係上、いずれは契りを結ぶことになる。遅いか早いかの違いだろう」
「契りとか古臭い言い方すんな!」

渾身の一撃とばかりに呪力の固まりが飛んできた。ひょいと避けると後ろにあったソファーにぶつかったが、これで木っ端微塵にならないあたり本当に部屋の全てが特殊なようだ。
とことん興味深い部屋だ、と片目を開いて感心していたのが、あきらの気に障ったらしい。さらに気合の入った一撃が自分めがけて飛んできたので、これまた軽やかに避けてやった。